初めてキース・ヘリングに会ったときの第一印象は「ずいぶん細長い人だな」。スラッと背が高いというより、針金のように細長いのだ。その上に幼さの残る童顔がのっているからどうもバランスが悪い。インタビューしてみると美術史や記号論の話が出て、ポッと出のアーティストではないことがわかる。そのあと「絶対に乗るな」と言われていた深夜の地下鉄に乗って、彼が広告の空きスペースにドローイングしていく姿を追った。左右を見回しながらものの1、2分で描き上げ、さっと逃げていく。急いで写真を撮って追いかける私。おもしろかったなあ。キースは現代の洞窟壁画家だ。